7-14. 動物細胞用ウイルスベクター
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動物個体に関してはおそらく唯一の方法であるため、遺伝子治療にも応用される
ベクターとして使う組換えウイルスは安全性という視点が特に重要視され、通常は、非増殖性(感染するが子ウイルスはつくらない)として使用することが原則となっている 1) レトロウイルスベクター
レトロウイルスの増殖
一本鎖DNAは環状二本鎖DNAに変換され、逆転写酵素のもつ組込み酵素活性によって宿主ゲノムに組込まれる
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増殖の制御
プロウイルスはレトロトランスポゾンなので、LTRと上記制御配列さえあれば、RNAは内部配列にかかわりなくウイルスタンパク質によってウイルス粒子内にパッケージングされる スプライシングされたRNAはψ配列がないため、ウイルス粒子に取り込まれない ベクター作製と利用の概要
ウイルスタンパク質をつくれるがψ配列を欠いたプロウイルスをもつパッケージング細胞を用意する
環状二本ウイルスDNAとして最小限必要な機能(LTR, ψ, pbs)をもち、内部にプラスミドベクターユニットのDNA、マーカー遺伝子、そして目的遺伝子をもつ組換え(ウイルス)DNAをつくる 組換えDNAをパッケージング細胞に導入し、宿主ゲノムに組込ませる
組換えプロウイルスから転写されたRNAがパッケージングされ、組換えウイルスとして産生される
組換えウイルスを目的細胞に感染させ、ゲノムに組込ませる。組換えプロウイルスからRNAとともに目的タンパク質が発現される
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ベクターの特徴
元のプロウイルス由来RNAはψ配列がないのでウイルス殻に入らない
感染細胞は生存し続け、ベクターに組込んだDNAはゲノムに組み込まれてから発現するので、遺伝子機能の恒常的発現が期待される
プロウイルスDNAの組み込み数は少数であるが、組込み一は定まっておらずランダム
→非増殖細胞では使いにくいという欠点がある
Column エイズウイルスをベクターとして使う ?!
むろん安全性のために、ウイルスベクターからは複製にかかわる機能は除かれており、粒子形成と感染にかかわる配列部分しか保持していない(粒子形成と感染に働くタンパク質は別のベクターから供給するという二重の安全策がとられている) 特定の細胞種にしか感染できないという欠点があったが(ウイルスの感染性はウイルス粒子の外側にあるエンベロープタンパク質によって規定される)、エンベロープタンパク質を感染細胞種域の広い別のウイルスのタンパク質に置き換えるという工夫が施されている 2) アデノウイルスベクター
アデノウイルスは約35 kbの線状DNAをゲノムにもち、それが殻タンパク質に包まれ、広い範囲の生物種の哺乳類細胞に感染する 多くの分化・未分化細胞、さらには休止期の細胞にも100%に近い効率で感染する
ウイルスDNAは核移行して複製・転写が起こるが、宿主ゲノムへの積極的な組込みはない
その後、ウイルスにパッケージングされる部分を残してすべてを外来DNAに置換したベクターを、パッケージングされないようにした非増殖型のヘルパーウイルスとともに上記相補細胞に導入し、ベクターをウイルス粒子として放出させる方法、あるいはヘルパーウイルスとの間で細胞内組換え反応を起こさせ、組換えDNAをウイルスとして放出させる方法も開発された いずれの方法も、組換えウイルスは非増殖性で、理論上、ヘルパーウイルスの産生は起こらない
3) その他の動物ウイルス
哺乳類細胞で使えるウイルスベクターとなる外のウイルス